心の記事3

馴染む。
外を歩いていると、大小さまざまな自然の音や人工的な音が空気を揺らし、風景に馴染んでいる。それは、その音の音源が風景に存在しているからだと考えられる。風に揺らされる木の葉、空を描いている鳥達、舟のきしむ音、工場の機械音、民家から漏れる食器洗いや洗濯機の音、車や電車や飛行機の音、これらの音源から出る音波たちが複雑にぶつかり合い、跳ね返りあい、風景に馴染んでいく。

  家の中でレコードやCDやカセットを再生させる。直接的な音源がそこにはないからなのか何か無理やり感が出てしまう。心の置き場を、作品の中に持っていく。作者の気持ち、空気、雰囲気、聴こえてくる貼り付けられた音、その過去に入り込む。音波は空気と共に心を大きく揺らす。回り終えた後、天井板の木目を見て現実に戻る。少し休憩が必要になる。
 
 心の置き場を変えずに、風景に馴染む音楽。生活の隙間に当たり前のようにひっそり存在し、気がつくと聴こえるような音楽。心を移動させなくても、馴染む、入ってくる音楽。

そんなのが、なんかいい。